1848年に懐中時計の組み立て工房として設立。1894年に高い品質と生産性を兼ね備えたムーブメントを開発し、究極を意味する『OMEGA』として発売。これがヒットし1903年には社名にOMEGAの名前が加わった。第一次大戦が始まると軍用時計の需要が増大。さらに第二次戦時中の1940年から1945年にかけては英国国防省に10万個以上の腕時計を提供した⁠。OMEGAの軍用時計はスクリューバックが採用され、防水性と高い精度を維持したため軍事作戦上も重要な役割を担った。1948年には軍用の技術を生かした市民向けの時計Seamasterを発表。後に防水性能が強化され60年代にはダイバーウォッチとして進化した。また1952年に誕生したコンステレーションは、当時ヨーロッパ各地の天文台で行われていた精度コンクールでそれまでの記録を塗り替えて圧勝を続け、OMEGAの名は高精度の高級時計の代名詞として世界に広がった。60年代後半にはDe Ville、Genèveといった人気モデルが相次いで登場し人気を呼んだ。さらに1969年にはNASAの有人宇宙船による月面着陸においてOMEGAが採用された。アメリカの宇宙開発でスイスのOMEGAの時計が採用された理由は、NASAの事前テストをパスできたのがOMEGAのみであったためである。アポロ14号では全ての電気系統が故障したため、大気圏突入時に唯一時間の計測ができたのがOMEGAの時計であったといわれている。このほか北極探査などの過酷な状況や、1/1000秒を競うレースやスポーツの世界でもOMEGAの機材が採用されている。
70年代に入ると圧倒的な性能をもったクオーツ時計が台頭し、スイスの伝統的な時計産業は壊滅的な打撃を受けた。OMEGAも企業再編を余儀なくされ、現在はロンジン、ハミルトン、プレゲなどとともにスウォッチグループを構成する主力ブランドのひとつとなっている。80年代にイタリアで流行したアンティーク時計がきっかけとなり、アメリカや日本でも単なる時間表示を超えた高級機械時計の存在意義が見直されている。90年代に入ってOMEGAブランドでも独自のムーブメントを搭載した高級機械式時計の生産が本格的に再開されたほか、60～70年代の機械式時計の限定復刻などでも話題をよんでいる。